総合人間はねたとも

京都大学総合人間学部生が送る、総合人間になるまでの軌跡

【総人生インタビュー vo.1】旅行を極めすぎて国家資格取得!?行動派総人生が語る、総人とは

京都大学総合人間学部、略して総人。京大生すらその生態は謎という究極の謎学部である。

hanetatomo-sojin.hatenablog.com

そこで総人大好きはねたともが総人生のリアルな姿をインタビュー!初回はこの方。

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Azu

奈良出身奈良住みの総人新2回生。旅行が大好きすぎて合格率10~20%程度*1の難関国家資格、「総合旅行業務取扱管理者」に1発合格。高校時代は文化祭と陸上に励み、ラジオのパーソナリティも経験。地理が好きで文化環境学系志望。アイコンが金魚なのは地元の大和郡山市が金魚養殖量日本一であることから。

なんで総人?

――なんで総人に来たの?

Azu:通ってた中高一貫校が色々な体験をさせてくれる学校だった。修学旅行は沖縄と北海道に行ったし、高校の時にはオーストラリアにホームステイした。そん中で社会って色々な職業の人がおるんやなって気付いて。高校で将来の夢決めろとかよく言われたけど、それを決めるのが怖くなった。それやったら今決めんくても大学でもっと色々な社会を知ってから決めればいいやと思って、大学に入ってから決められる総人に出会った。

総人はやりたいことを決めて来る人と、やりたいことを決めに入る人に2分される。Azuは後者のようだ。ちなみに筆者も後者である。

総人に入って良かった?

――で、実際総人に入って良かった?

Azu:めっちゃ良かったと思う。総人には色々な人がいる。中高も変人多かったけど、大学入ってこんな人おるんやって。Twitterがもうほんまに皆個性爆発しててやばかった。

――あー、カオスやったな。

Azu:皆ツイート多過ぎんねん。更新1秒ごとにしてもどんどんツイートが来るからさ。Twitter見てるだけで楽しいの初めてや。1回も会ったこと無い人でもツイート見て知れたし。最初の半年くらいずっと刺激強かった。自分は勉強面よりも人間面で良かったなと思ってる。

京大はTwitterが盛んだ。筆者もツイートしまくった1人である。今では落ち着いたが、帰省する度にタイムライン占拠の罪に問われていた。

――いいですねぇ、Azuは中高の時、変人とか言われてた?

Azu:言われたよ。

――大学では?

Azu:いや、言われへん。

――そうなんよ。僕も中高の時は変人扱いされてたけど大学入ってからはそんなに言われなくなった。なんかそれっておもろいなって。

Azu:中高の時は周りが常識人で自分が変人やったから偏差値が50じゃなかったけど、大学では変人の中に変人が混ざっても偏差値50やん。偏差値60なろうと思ったらもっとぶっ飛ばなあかん。

――確かに。でもそういう環境って心地よくない?変人とかいう眼鏡なしで自分を見てもらえるやん?

Azu:わかる。中高一貫の時は最初は皆個性持ってなくて6年間経つにつれて個性がついて変人になっていく感じやけど、総人の何がすごいって、入った途端から全員個性全開の変人なんよ。4年経ったらどうなんやろなっていうのが自分の今の楽しみ。

――なるほど。じゃあ大学入ってからやりたいことを決められるっていう側面で、総人に入って良かったことはある?

Azu:まだ全然変えれるやん?全国ほとんどの学部は専攻決めたらどんどん進んでかなあかんのに、総人は飽きたなって思ったらほいって方向転換できる。それって総人のすごいいいところやと思う。飽きても進まなあかん所ではない。

――せやな、東大の進振りも入ってから色々やった上で進路を決められるけど、それとはどう違うと思う?

Azu:別に、将来のこと考えるんやったら勉強だけじゃないやん全然。勉強以外の時間をたくさん作ってくれるってのが総人やと思う。進振りがあると絶対勉強しなあかんし。

総人は変人が多い。今までとはひと味違う人間との出会いは総人の醍醐味と言えるだろう。Azuもその一人だが、そのバラエティの豊かさはこれからのインタビューでさらに明らかにしていきたい。

 おもろい講義

――おもろい講義とかあった?

Azu:情報基礎演習統計入門は新入生に強くおすすめしたいかな。役に立つ。あと、前期は神経科学の基礎がめっちゃ面白かった。

――授業中にニコニコみたいにコメントが流れるやつな。

Azu:そうそう。後期はスポーツ心理学が面白かった。前半はスポーツの偉人の言葉を紹介して後半は心と体の繋がりとか運動ができるようになる仕組みを学ぶって感じ。で、講義の感想書けば終わり。楽単やし楽しい。

あとは他学部聴講で法学入門も取ってた。全教の法学と違って法学部生向けやから法学的な考え方を結構知れて刺激的だった。論述試験一本で合否しか出ないから単位取りやすいし。

――なるほど。地理系に興味があるって話やったけど、それはどうだった?

Azu:地理は中学の時からずっと好きだったけど、大学の地理の講義って初学者向けの説明から入るから、中高で地理を極めた人からすると物足りない。でも具体例を扱う各論は色んな場所を取り上げてくれるから旅行気分で楽しい。実際講義で扱ったとこに旅行に行くことがあって、ほんまや~ってなる。

まとめると

情報基礎演習統計入門は役に立つので新入生におすすめ。

神経科学の基礎スポーツ心理学がおもろかった。

・中高で頑張った科目の講義は初学者向けの説明が入るから物足りないけど各論は具体例を知れて面白い。

※2020年度の情報なので2021年度は内容が変更される可能性があります。

履修選びは講義の感想を受講者から聞くのが一番!これはAzu一個人の感想に過ぎないが、色々な先輩や同級生に聞いて悔い無き履修を。

旅行について

――資格取るくらい好きな旅行について聞きたいな。一人旅をよくするみたいやけど、初めて一人旅したのはいつ?

Azu:一人旅ってほどじゃないけど、中学の時に姫路まで行ったのが初めてかな。今は違うけど昔は電車が好きで、行き先に書いてある駅ってどんな駅なんやろって気になった。それが姫路だった。で、段々遠くなって、大学生になってお金を稼げるようになってどんどん規模が大きくなった。遠くに行くと街の景色も文化も違って、もっと色んな所に行きたいって熱がさらに加熱した。

――地理が好きなのと旅行が好きなのは関連してる?地理はなんで好きになったん?

Azu:関連は絶対してるなあ。地理が好きな理由か。奈良って自然豊かやし、古代の街作りから最新の街作りまで全部揃ってるのよ。海は無いけど。だから地理で習ったことが帰り道に見れる。進研ゼミでやった所だ!じゃなくて地理でやった所だ!って。日本史もそうなんだけどね。

――地理と電車好きが興じて旅行を好きになったんやね。新しい文化と景色を見られるってこと以外に、旅行の何がAzuを惹きつけるんだろう?

Azu:今東京一極集中が進んでて、過疎地は観光地がどんどん消えて電車も消えてる。そういう期間限定の景色や文化に惹かれてるんじゃないかな。限定モノに飛びつくおばちゃんと一緒。

――インスタによく一人旅の投稿してるよね。何のために発信してる?

Azu:結構マイナーなとこも行くから、それを紹介したいってのはある。あと、今コロナで旅行の自粛が言われてるけど、旅行自体が悪い訳じゃない。旅行で行った人同士が会話したりするから感染するのであって、一人旅だったら喋る量減るしむしろ感染リスク下がる。だから旅行自体は悪くないってことをSNSを通じてアピールしてる。

――なるほど、さすがは総合旅行業務取扱管理者。

Azu:プライドあんのかな笑

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コロナ禍の大学生活

――結構大人の人に聞かれる、コロナ禍の大学生活について聞かせて欲しいな。コロナ禍は大学生活から何を奪い何をくれたんやろ。

Azu:総人生はキャラが濃いって言ったけど、実際に会わないと分からん部分も多いからそれが無くなったのは大きい。Twitterは相手の表情とか感情が全然分からん。対面じゃないと100%のコミュニケーションってのは中々難しい。

コロナがくれたものとしては、奈良にいながら何でもできるようになったっていうのはでかい。3限5限に講義をオンラインで受けて4限に車校に行けたし。普通じゃできひん。

対面コミュニケーションの喪失とオンライン化による物理的距離の超越。コロナ禍大学生活の功罪はこれに尽きる。

大学の資本とも言える人との出会いの喪失は大変な痛手であり、自宅勢は地元の友達と会うことで寂しさを埋めた人も多いだろう。失って初めて気付く対面コミュニケーションの大切さは、筆者やAzu含め大勢の大学生が実感したはずだ。

だが、コロナ禍がくれたものもある。強制的にオンライン環境が導入されたことによって、これからは色々なことがオンラインでできるようになる。場所に縛られないオンライン環境では、移動時間が浮くだけでなく、それぞれ好きな場所にいながらコミュニケーションができる。

確かに厳しい年だった。だが、環境を嘆いても残るのは不満とむなしさだけだ。正の側面も見つめつつ、何とか生きてる自分を褒めながら、おじいちゃんになったらこのまるでSFのような貴重な体験をふと思い出して笑い飛ばしてしまおう。

 総人って何やねん。

――〆です。総人って何やねん。

Azu:日本人って周りに合わせなあかんっていう風潮でかいやん。だから皆が右向いてたら自分も右向かなあかんっていうのが日本の良いとこでもあって悪いとこでもあると思ってて、そん中で総人っていうのは右向いてる人も左向いてる人も後ろ向いてる人もおって、よう分からん斜め43度くらい向いてる人もいっぱいおる訳やん。皆が365度ばらばらな方向向いてる訳やから、誰が基準とか無い訳よ。皆が違うことしてるから、何か自分とは違う人に対して批判したとしても、自分も他の人と違うことをしてる訳で、批判の対象になっちゃう。だから批判できないし、寛容性とかが身につく。

――なるほどね、右向いてる人が斜め43度向いてる人に向かって「お前違うやん」って言っても「いやお前も違うやん」ってなっちゃうわけだ。

Azu:外に出たら皆が右向いてたら右向かなあかんけど、学部の中だったら右向けって誰かに言われても自分の向きたい方向を向ける。「自分が一番いたい自分でいれる場所」って言ったら一番コンパクトで上手い言い方になるかな。自分がこっち向きたいって方向にずっと向いてられる。結局そこに尽きる気がする。

――変人って言われなくなった話と似てるな。皆が変な方向向いてる。

――Azuは、将来の選択肢を知ってやりたいことを決められるっていう理由で総人に入ったよね。いざ総人って何やねんって聞くと、それより先に先に自分が自分らしくいれる場所っていう答えが返ってきた。この違いはおもろいな。入る前と後ではやっぱり印象は違うよね。

Azu:それはどの大学でもそうなんちゃうかな。入った目的と入ってから気付くことは全然違うってのはどこの大学でもそうやん。それをポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかで大学生活全然ちゃうと思う。

――めっちゃ良いこと言うやん。

Azu:結局新しいとこ入ったら、違うなってことは起きる訳であって、それをポジティブに捉えられたら良い方向に行くんちゃうかな。キャンパスライフや!と思っていざ入ってみたらコロナでキャンパスなんてほど遠い存在だったけど、ポジティブに捉えたら結局良いことあるやんって気づけるから。

「自分が一番いたい自分でいれる場所」それがAzuの答えだった。 “普通”が曖昧になった環境で、“普通”に縛られず自分らしく居れる場所。確かに総人はそういう所だ。

最後にAzuが言っていたことも示唆に富んでいる。

人はネガティブな情報に意識が向かいがちである。人間が生き延びる上で、敵が来るとか病気が流行るという生死に関わるネガティブな情報に意識が行った方が有利だからだ。今回のコロナ禍のような不安定な状況ではその傾向が強まる。そんな時こそ、“ポジティブに捉えたら結局良いことあるやんって気づけるから”

 あとがき

1人の同級生に協力してもらい、総人生のリアルを1つ提供できたかなと思う。

新しい、ひと味違うものに強い興味を示すAzu。その強い好奇心に加え高校時代から発揮された行動力。科目も人も多様な総人はAzuにぴったり合っているように思える。そして現状をポジティブに捉える力。特に不安定な今に必要な力である。まだ将来やりたいことは決められていないというが、残りの大学生活で行動を続ける内に、きっと何か自然と決まってくることだろう。

初めてのインタビュー記事。大量の文字起こしから始まり大変時間がかかったが、初めての作業は新鮮で楽しかった。それだけで満足ではあるが、この記事が総人新入生や受験生などに役立てばさらにこれ幸いである。